HOMEの中のぎふ観光エッセイ大賞2008
コンテスト:ぎふ観光エッセイ大賞
画像:エッセイ大賞イメージ

テーマ:岐阜市の観光に寄せる想い

大賞
タイトル:夫の金華山
氏名:佐々木 和子 (岐阜市) 入賞作品を読む
 金華山は子供の頃の遊び場だったが夫の口癖だ。岐阜を中心に幾つかの赴任地に行っては帰っての転勤を数度、そのひとつの赴任先で出会い結婚した。岐阜へ転勤してきた時、真っ先に案内されたのが金華山だ。
 歴史で有名な岐阜城だと、厳かな気持ちと実際にその地に立つ喜びに浸っているというのに、夫はさっさと前を歩いていく。息を切らして後を追うと振り返り、「ここんとこでドングリ集めちゃあ、よう投げ合っこしよった」と破顔一笑する。大手門址の説明なんてありゃしない。
 双子で生まれた娘たちが二歳を過ぎた頃にも岐阜にいた。お揃いの小さなリュックサックを二つ買ってきて「明日、金華山の健康ウォークに参加するぞ」と、嬉しそうに大声で言う。まだ無理と言っても、子供と金華山へ登る楽しみを奪うのかと耳をかそうとしない。最年少の参加で先頭を歩く写真が新聞に載って夫は大喜びだった。彼女たちも頑張って歩き、なんとか完歩証を頂いた。
 その娘が自動車運転免許を取ると、金華山のドライブコースを走って初めて一人前だと助手席に乗って連れ出す。「お父さんが免許を取って友達と初めて走ったコースでお前も試したるで、合格したら車買ったるわ」
 後ろの席で肝を冷やしながら遣り取りを聞いている身も知らないで、前の二人は張り切って車を走らせる。彼女は中古の軽乗用車を手に入れた。
 現在、退職した夫は三歳になる孫息子と一緒にドングリ拾いに金華山へ登る。
「まあちゃん、お祖父ちゃんも小さい頃金華山でようドングリ拾いしよった」
「お祖父ちゃん、早く早く、あっちいっぱい」
「ぼう、もうちょこっとゆっくり登らにゃあ」
「お祖父ちゃん、まあちゃんが手繋いだる」
 夫は彼が自動車運転免許を取ると、助手席に乗ってドライブコースを走るのだろうか。

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優秀賞
タイトル:先生の贈り物
氏名:原田 和子 (大阪府大阪市) 入賞作品を読む
 岐阜には忘れられない思い出がある。今から二十数年前、私は愛媛県立O高校の三年生だった。ブラスバンド部のマーチングで旗の役になり、若い男性教師J先生の厳しい特訓のおかげで、岐阜で行われた全国高校文化祭マーチングの部に愛媛県代表として参加した。
 大会のレベルは高く、どの発表を見ても心を揺さぶられる素晴らしい演技ばかりだった。
 大会後、私達はなぜか、岐阜の鵜飼船に乗る日程になっていた。屋形船が何艘か貸切りにされると知り、部員同士で大喜びする私達に、副顧問のO先生がこっそり耳打ちしてくれた。この大会のために二年生が修学旅行に参加できなかったから、この鵜飼船をその代わりとして、J先生が学校側には内緒で用意してくれたと。そんなJ先生の心を知り、誰からともなく、二年生のいい思い出になるよう声を掛け合い、楽しい雰囲気を作っていった。伊勢湾に注ぐ長良川は、ゆったりと広く雄大で、濃い緑の中で澄み切った空気を、時折ふと燕が甲高く鳴きながら横切って行く。船上ではしゃぐ私達を、J先生はビールを飲みながら、笑って見守っている。
 夜、鵜飼が始まると、私達の歓声と鵜匠の掛け声が、水面に映る篝火の乱反射に重なり、私達の興奮もピークに達した。何気なく振り返った時、見てはならぬものを見た気がして、慌てて目をそらした。練習ではあれ程厳しかったJ先生の涙。努力の集大成とも言える大会への参加を、それとも私達が楽しんでいるのを喜んでのことなのか。全国大会は発表のみで順位付けはなかったが、私達はとても満足だった。きっと先生も同じ気持ちだったに違いない。苦しくも楽しい特訓の数々。その思い出は私達部員と先生だけの、誰にも奪い取ることのできない大切な宝物だ。
 十八の夏、ひとときの素晴らしい、先生からみんなへの贈り物。今でも岐阜と聞くとあの鵜飼船の事を思い出し、胸が熱くなる。

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タイトル:長良川と記念日
氏名:田中 奈美恵 (愛知県江南市) 入賞作品を読む
 またここに来た。心地よい秋の風に誘われる様に、結婚記念日の夜、長良川の辺へ。
「鵜飼舟、ここから見えたよね。」
頷く夫の横顔に、幸せな気分になった。月の光に照らされ、川の流れが様々な表情を見せ実に幻想的だった。
 私達夫婦にとってこの川は縁が深い。
 五年前の夏、川原で仲良さそうに腰かける家族や恋人達に混じり、長良川の花火大会で初めてのデートをした。夜空を彩る花火と、私達を見下ろす荘厳なお城が忘れられない。それ以来、毎年“初デート記念日”と称してこの花火大会に行っている。
 二年前のある日、何気なく立ち寄った長良川の川岸。偶然そこに、橙の炎に照らされた舟が一隻ニ隻と近付いて来た。
「あ!鵜飼だ!すごい!」
闇の中、歴史を感じさせる舟の上で、鵜匠が鵜の首を掴み、鮎が出されるのが、川岸からでも鮮明に見てとれて、二人共感動した。
 またも幻想的な風景に見とれていた時に、突然プロポーズされた。
 それが“婚約記念日”。
 『ドキドキするね』メールでこんなやりとりを直前までしながら、両家の初顔合わせを長良川を一望する旅館の一室で行った。緊張でうまく言葉が出ない私の父に、彼のお父さんからの
「ここからの景色綺麗だわ。見てみなせい。」
という気の抜けた言葉に促され、皆で窓の外を覗いた。光がキラキラと川面に映り、悠々とした山々が私達を和ませてくれた。
 これが“顔合わせ記念日”。(もういいか)
 喧嘩した日、泣いた日、落ち込んだ日、どんな事があっても、二人でここに来れば大丈夫、そんな気がする。
 「あと何の記念日を作ろっか。」
私の問いに、隣の夫と川面に映る月が笑った気がした。

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佳作
タイトル:梅林公園
氏名:塚本 邦彦 (岐阜県土岐市)
タイトル:金華山にて
氏名:曽我 麻里子 (岐阜県加茂郡富加町)
タイトル:篝火
氏名:平岡 晃江 (東京都世田谷区)
タイトル:妻と
氏名:大塚 肇 (岐阜市)
タイトル:我が心のふるさと岐阜に寄せて
氏名:渡辺 均 (愛知県名古屋市)
タイトル:思い出を訪ねて
氏名:富田 圭一 (兵庫県西宮市)
タイトル:四季を楽しむ
氏名:三尾 富子 (岐阜市)
タイトル:山頂の風の中で
氏名:阿部 英子 (静岡県磐田市)
タイトル:鵜飼雑感
氏名:今枝 明子 (岐阜県羽島市)
タイトル:瞼に浮ぶ長良川の夜
氏名:中山 忍 (滋賀県大津市)
エッセイ大賞入賞作品発表!
2008
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